研究概要 |
過去におけるスピネル型の化合物に関する研究は,磁性研究の観点から,フェリ磁性を中心に磁性を出現させる物質についての研究が主であった。我々は,次の三点を考慮して超伝導,および金属-絶縁体の研究を系統的に行った。;(1)結晶場も考慮して非磁性になるような元素の選択,(2)酸化物をカルコゲナイドに変えて,共有結合性を強め,伝導性を高める,(3)Aサイトの銅原子に注目し,Jahn-Teller効果を期待した。主たる結果は以下のとおりである。 CuRh_2S_4は超伝導GLパラメータκ(0)=21,電子-格子結合定数λ-_<ep>=0.68をもつ典型的な第2種超伝導体であることが判明した。種々の性質はBCS理論で良く説明がつき,弱結合と中間結合の間に位置する物質であることが判明した。T_C直下で1/T_1のCoherence Peakも明瞭に観測される。LiTi_2O_4のディバイ温度が685Kであるのに対し,CuRh_2S_4では230Kと極端に小さくなることが主としてT_Cの減少を導く。CuRh_2S_4では陰イオンSの空隙で陽イオンがRattlingしているためと考えられる。 スピネル型化合物において,AサイトはCuに固定して,Bサイトを+3価の状態でd電子6個のCo,Rh,Irを選択し,カルコゲナイドとすると,超伝導または金属-絶縁体転移が出現する。もし,金属-絶縁体転移を起こさないとすれば,CuIr_2S_4は,かなり高温で超伝導になると考えられる。種々の実験事実が判明しつつあるので,理論的な解明が必要である。
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