研究概要 |
超伝導体内を伝播する超音波は、これによって引き起こされた磁束運動と結合し、磁束状態を反映した種々の変化が音速と減衰係数に現れる。また、超音波やNMRは、超伝導転移、構造相転移、磁気転移等種々の相転移に対してもそれぞれ特徴ある振舞いが観測され、相転移研究の有力な手段となっている。 本研究はLa_<185>Sr_<015>CuO_4単結晶について、結晶格子系のc_<11>、c_<33>、c_<44>、(c_<11->c_<12>)/2モードの超音波の音速と減衰係数の温度依存性を一定磁場中で、磁場方向、磁場強度を変えた測定を行い、独立な3種類の磁束の運動方向すべてについて磁束格子の弾性定数を求めることに成功した。結果は酸化物高温超伝導La_<185>Sr_<015>CuO_4の磁束格子は通常の超伝導体の場合に比し70%軟化していることを見いだした。さらに、その温度依存性をThermally Assisted Flux Flow(TAFF)モデルによって解析し、磁束の各運動方向に対するピン止めエネルギーU_<ij>を導出した.すなわち、結晶のc方向の磁束をa方向に動かすCA motionでU_<CA>(0K,14T)=25K、a方向の磁束をc方向に動かすA CmotionでU_<AC>(0K,14T)=972K、a方向の磁束をb方向に動かすAB motionでは、U_<AB>(0K,14T)=201Kと求められた。また、磁場依存性はU_<AC>についてはH^<-0.25>、U_<CA>についてはH^<-1.5>と求められた。この結果は2次元的な磁束構造を大きさの順序はU_<AC>>>U_<AB>>U_<CA>と、U_<AC>がずばぬけて大きいという結果を得、磁束が超伝導のオーダーパラメターの小さな層間にトラップされるという本質的ピン止めの存在を検証した。また、超音波の場合、磁場方向と独立に磁束の運動方向を指定できる利点を生かし、c面から角度θ傾いた磁場配向における本質的ピン止めに有効なピン止めエネルギーU_<AC>(0,θ)を求めた。U_<AC>(0,θ)は予想に反して強いθ依存性を示し、θ〜30°で約1/10に減少する。特にθの小さいところ角度依存性に対してはU_<AC>(0,θ)=U_<AC>(0,0)(1-2ξ_<ab>tanθ/a_c)で表される強い角度依存性を説明するモデルを提案した。
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