PrBa_2Cu_3O_<7-δ>(PBCO)がいわゆる123構造をとるにもかかわらず超伝導を示さないことが多くの研究者の興味を惹き、YBCOのYサイトの一部をPrで置換した系の超伝導抑制効果についての研究がこれまでにも数多く行われてきた。我々は、特に単結晶を用いた精密物性研究の必要性を痛感し、本研究では特に、固溶体単結晶の作成とそれを用いた磁気抵抗測定による研究を実施した。その結果、まずYBCO-PBCO固溶体単結晶をフラックス法により広範な組成領域で作成することができた。これらの単結晶を用いてT_c直上から上の常伝導領域で磁気抵抗の測定を行い解析した。その結果、特にPr濃度が0.3〜0.5(T_cでは、30K〜0K)の領域で負磁気抵抗成分が存在することを超伝導領域の試料では初めて明らかにした。この負磁気抵抗成分は通常の磁場依存性測定のみからは検出が困難であるが、角度依存性測定を組み合わせることにより分離抽出できることを示した。また、非弾性散乱長の温度依存性がほぼT^<-1>であることも見出された。この手法は、更にYBCOの酸素欠損試料やYBa_2(Cu_<1-x>Zn_x)_3O_<7-δ>等の試料における負磁気抵抗成分の存否、ひいては、モット転移近傍におけるアンダーソン転移領域の探索にも応用できるものと考えられる。
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