1.1次元ハイゼンベルグ反強磁性鎖に反強磁性的に結合した不純物スピンのふるまいを、有限系数値的厳密対角化法を用いて調べた。本年度購入のソフトウエアMathematicaを用いて、数式処理及びデータ処理を行った。1不純物、2不純物、不純物格子の場合に、系の大きさを変えて束縛エネルギーと相関関数とを計算し、系のスピン数N=26〜28くらいまでの値からN→∞への外挿を行い、かなり信頼できる値を得た。局所的一重項が不純物スピンのまわりに発展すること、その局所的性質は他の不純物スピンの存在にほとんど影響されないこと、不純物スピン間には小さな有効相互作用が働き、不純物スピン間の距離の変化とともに振動的に変化すること等を見い出した。不純物格子の場合には、励起スペクトルはギャップをもち、その大きさは、不純物スピンの結合定数の増加とともに、不純物スピン1個当りの束縛エネルギーよりもはるかに小さい値から束縛エネルギーと同程度にまで成長することを見い出した。 2.原子内クーロン相互作用を含んだ多重軌道タイトバインデング模型に対して、局所的三体相関を取り入れて電子構造を計算する理論を発展させ、この理論を強磁性Niの3d状態に適用し光電子放出実験の解析を行った。三粒子励起状態の多重項構造を完全に考慮することにより、三粒子励起状態の一部は、3dバンドの底とエネルギー的に接近するようになり、準粒子状態と強く混成するようになる。この過程により、自己エネルギー補正は大きくなり、バンド幅や交換分裂幅を平均場近似の値から縮め、角度分解型光電子放出実験から得られる準粒子バンドをよく再現する結果が得られた。フェルミ準位より6eV位下のサテライトピークも、実験に対応して得られた。又、サテライトの形はmajorityスピン部分とminorityスピン部分とでかなり違うことを指摘した。
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