研究概要 |
高温超伝導体および関連物質について、高酸素圧から水素雰囲気までにわたる様々な雰囲気下での合成を行い、酸素量と構造・相関係・相転換および物性との関連について調べた。結果、以下のような成果を得た。(1)LaBa_2Cu_3O_yにおいて、高酸素圧処理により初めて酸素量が7を越える(y=7.06)試料の合成に成功した。酸素量が6から7.06にいたる試料を合成し、超伝導性を調べた結果、酸素量の増大とともに超伝導転移温度は上昇し、y〜7での極大を経て、y=7.06では再び79Kに低下する即ち123化合物では初めてのオーバードープ挙動を観測した。核磁気緩和時間の測定からは、スピンギャップ挙動の消失と転移温度の極大とは一致しないことが示される。また、超伝導は正方晶から斜方晶に変わるy【greater than or equal】7で発現し、構造と超伝導との密接な関連を示している。La-123ではY-123にみられる60K相は存在しない。(2)La_<2-X>Ba_XCuO_4において、x=0.125近傍では低温での正方晶への相転移に伴い、超伝導は抑えられるが、低温で静水圧を加えてゆくと、低温正方晶→斜方晶→高温正方晶と相転移し、斜方晶に転移する圧力で超伝導転移温度は急速に30Kに復活する。また、電気化学的酸化によりδ=0.11の過剰酸素を含む試料はバルク超伝導を示し、X線回折のその場観察では、斜方晶転移に伴うと思われるわずかな回折線の半値幅の増大がみられるが、ほとんど低温まで正方晶のままである。これらは、超伝導と構造および酸素不定比性との密接な関連を示している。(3)YBa_2Cu_4O_8,Tl_2Ba_2CuO_y,La_2CuO_4について共同研究で核磁気共鳴により、Cuサイト,Oサイトのスピンダイナミクスについての情報を得た。(3)カルコゲナイド超伝導体La_3S_4について不定比性とBa置換の効果を調べ、両者とも超伝導転移を抑えるが、前者が金属的なままであるのにたいし、後者では金属-半導体転移を示す。
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