研究概要 |
層状構造を持つ酸化物超伝導体を溶液紡糸法により細い繊維状に合成し、繊維の形状的内部構造的な特徴を有効に活かし、配向性に優れた高いJcを持つ良質な線材を作成する事を目的として前駆体繊維の有機物を揮発させる条件を検討した。450℃と500℃まで30℃/hで熱分解した繊維について部分溶融凝固処理を検討した。いずれの熱分解条件でも部分溶融凝固温度、時間、凝固速度、123相の成長速度を制御する事により77K,OTでのJc=10^4A/cm^2を再現性良く容易に達成する事が出来た。特に450℃まで熱分解した繊維は適当な熱処理により繊維の長さ方向にab軸が配向すると共に繊維直径方向にも結晶が配向しているのが認められた。次に直径110μmの前駆体繊維でゆっくり熱分解しその部分溶融を検討した。その結果、直径25μmでJc=20000A/cm^2以上を達成できた。細い繊維の部分溶融凝固による最適な条件は太いものと比較するとかなり狭い範囲に限定される。さらにより細い繊維ではまだ77K,OTでJc=0.45A/cm^2(8μm)しか得られていない。 最近Reを添加する事で化学的に安定なHg-1212相を作れる事が見いだされたのでその繊維化を試みた。始めにBa,Sr,Ca,Cuの酢酸塩と過レニウム酸アンモニウム、PVA,プロピオン酸の均一水溶液から乾式紡糸により直径250μmの前駆体繊維を作製した。Ba:Sr:Ca:Cu:Reの比は1:1:1:1.8:0.2(1)、1.8:0.2:2:3:0.1(2)であった。紡糸繊維を30℃/hで450℃まで加熱して有機物を除き、(1),(2)繊維をそれぞれ950℃,910℃で1h加熱した。加熱(1)繊維をHg混合ペレットと共に石英管に真空封管して880℃,4h熱処理しTc=93Kで77K,OTでのJc=2300A/cm^2のHg1212相繊維を作製する事ができた。また(2)繊維を860℃,65h反応させてTc=127Kで77K,OTでJc=1000A/cm^2の1223相繊維を作製した。
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