アルカンのチタノシリケート触媒は穏和な条件でアルカンの酸化を起こすが、この場合、末端メチル基は酸化されない。そこでチタン以外の遷移金属を骨格に含んだゼオライトとしてバナジウムを含んだゼオライトVS-2(ZSM-11型)を、Si(OEt)4、VCl3を原料とし、Bu4NOHをテンプレートとして合成することができた。VS-2のホトルミネッセンススペクトルでは4配位のバナジルV=O種に基づく発光が観測された。さらに、(0-0)と(0-1)バンド遷移間のエネルギー幅は二次微分から950cm-1と求まり、IRの結果と一致した。この発光はバナジウムを含浸担持したシリカライト-2にはほとんど観察されない。また、TS-2では4配位のチタニルTi=O種に基づく発光が見られない。これらの結果から、IRスペクトルにおけるチタノシリケートの960cm-1の吸収はSi-O-defectによるもので、バナドシリケートの965cm-1の吸収はV=Oによるものと結論できる。VS-2を触媒としたヘキサンの過酸化水素による酸化反応ではd位の酸化により末端アルコールおよびアルデヒドが30%を越える選択率で生成した。溶媒としてアセトニトリルを用いることにより反応速度に向上が見られた。シリカライトにバナジウムを含浸した触媒では酸化反応はほとんど起こらず、IR、フォトルミネッセンスの結果とよい対応を示した。VS-2はアルケンのエポキシ化も起こすが、2-アルケン/1-アルケンの酸化速度の比がチタノシリケートに比べて小さく、チタノシリケートの活性酸素種に比べて親電子性が弱いことが示唆された。
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