研究概要 |
本研究は磁性の根源ユニットとしてラジカルと共に注目を集めている三重項カルベンを安定化し、究極的には室温でも長時間安定に存在しうる安定カルベンを開発し、かつ磁性を含む物理化学の諸性質を測定することを目的としている。 前年度は2,2',6,6'位に一連の置換基(R)を持つジフェニルカルベンを発生させ、その寿命測定を行った結果、寿命に対するRの効果は:Bu<C1<Meの順に増加し、ジデュリルカルベンは室温ベンゼン中で半減期が300msと最高であった。 本年度はポリメチルジフェニルカルベンの消失経路の一つである分子内C-H挿入を制御する目的で、オルト位のCH_3基をCD_3に置換した一連のポリメチルジフェニルカルベンを発生させ寿命測定したところ、いずれも長寿命化し最高1秒の三重項カルベンの発生に成功した。一方、RとしてBrを導入した一連のポリブロモジフェニルカルベンを発生させ、寿命測定を行った結果、2,2',4,4',6,6'-ヘキサプロモジフェニルカルベンは室温溶液中で1秒以上、結晶中では数ケ月と非常に長寿命であることを明らかにした。さらに4,4'-位の臭素をt-ブチル基で置換したものは室温で30秒以上の長寿命カルベンであることも明らかにした。
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