研究概要 |
強磁性分子磁性体β相p-NPNNについては,平成5度「分子磁性体の強磁性共鳴」の課題で,液体ヘリウム3温度での磁気共鳴の測定を行い報告した.その結果,低温での共鳴の吸収線形が高温と大きく異なることを示し試料の形状効果の重要性を明らかにした. 平成6年度はこれらの結果を踏まえ,より精密な測定を行った.真球試料の作製が必要であることから,もろく壊れやすい困難を克服し,ほぼ満足すべき真球試料が得られ,測定結果を得たのが本年度の成果である.内容を要約すると 1.gシフト 強磁性転移温度付近では吸収波形がひずみg値の決定ができないが,この効果は吸収の飽和が原因であり,十分弱いマイクロ波の条件で測定しなおした.この結果g値を常磁性領域から強磁性領域まで全域で決定できた. 2.強磁性共鳴 平成5年度報告したFoldover効果にはヒステリシス効果があらわれるが,これは本質的に形状効果に起因することが明らかにされた. 3.強磁性状態の緩和機構 一般に強磁性体の一次緩和機構はスピン波の試料表面での散乱による,p-NPNNで緩和の異方性が観測されるのは,磁場方向によっては強磁性状態における個々のスピンの吸収が通常のマグノン系の吸収とは異なり集団励起となっていないためで,系の低次元性に起因すると考えられる.この結果系の容易軸はb軸,困難軸はc軸方向であることが明確になった.
|