研究概要 |
まず第1に、KdV方程式に2階と4階の空間微分作用素の散逸摂動を持つ典型的なモデル方程式として、傾斜面上を流れる液膜流を記述する方程式として知られるベニー方程式の解構造を調べたことである。特に摂動が小さいときに、力学系理論によってパルス進行波解を構成し、KdV方程式のソリトン解との比較を計算機解析及び(非線形非平衡系に対して用いられている)フエーズ・ダイナミクス法を用いて行なった。得られた結果は、KdV方程式には1-自由度を持つパルス、周期進行波解が存在するが、ベニー方程式は一意的にパルス、周期進行波解が選択されたことである。この解の安定性はこれまで知られていなかったが、線型化安定性解析によってこの問題を解決した。第2に、摂動が大きい場合のベニー方程式の解挙動である。この場合には摂動の強さを大きくすると分岐現象が起こり、非常に複雑な解構造が現われることが物理的説明から知られている。しかしながらその理論解析は現在の所非常に難しく、我々は計算機シミュレーション法に頼ることにし、スペクトル法、擬スペクトル法のパッケージを作り,今回購入したワークステーションを解構造追跡ソルバーとした。解構造を調べるには多大な計算とそのデータの可視化という問題が生じるが、これまで代表者が反応拡散方程式系に対しておこなってきた経験と実績がこれを可能にした。更にこの方法を、生物の集合形成を記述するある摂動を受けた保存系方程式に対して適用することにし、平衡解、パルス進行波解などの安定性を考察することもできた。これらの結果は非線形非平衡摂動を受けた可積分系、保存系の解析の上で重要な結果を与えるものと思われる。
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