4次元多様体X上のSU_2束の反自己双対接続のモジュライ空間Mのスピン構造については、概複素構造を持つ場合いくつかの付帯条件のもとで存在を示していたが、その付帯条件は除けることがわかった。これは指数束の切除性質を用いることでわかる。一般の、概複素構造を持たない場合は、概複素構造の存在に関する古典的なWuの定理とやはり指数束の切除性質を使うことにより、ω_2(M)=(1-b_1(X)+b^+_2(X))ω_2(β)になること(ここでβは基点SO_3ファイブレイションでそのω_2はXのスピン構造とSU_2束のc_2でわかる)が予想され、その証明の細部を埋めるところにきている。これよりモジュライ空間にスピン構造が存在する為の必要十分条件が完全にわかることになる。 またモジュライ空間の指数を用いて定義した、ホモロジー3球面の不変量τとCasson不変量との関係は未だに謎であるが、反自己双対方程式を摂動したモジュライと摂動しないモジュライの間のコボルディズムを作り、摂動しないモジュライを解析することにより、Casson不変量との関係がつくのではないかと考えている。 最近現れたSeiberg-Witten理論との関係も興味深い。M+S^1の場合にSeiberg-Witten解を求めると、それは自明なものしかない。これは、ホモロジー球面の基本群のU(1)表現は自明なものしかないことに対応し、これではSU_2とモジュライ空間の非コンパクト性をあらわに使った我々の不変量を、Seiberg-Witten理論で、少なくとも直接的な方法では、捕まえることはできないと思われる。Seiberg-Witten理論はb_1(X)=0あるいは単連結の場合にはKronheimer-Mrowkaの構造定理をよく捉えているが、b_1(X)=0であるが、単連結でない場合に基本群の情報を捉えていないということを、我々の不変量は示唆しているように思われる。尚、Seiberg-Witten方程式の解のモジュライのスピン構造は応用上も重要である。
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