現在の数学の諸分野において複素構造を持つ対象が重要な役を果していることが少なくない。特にその間の正則写像や有理型写像のモジュライの解析的、幾何学的構造を研究するに際し、有理型写像の値分布理論(Nevanlinna Theory)、(小林による)双曲的擬距離を用いた正則写像の理論と数論及びディオファンタス幾何のアナロジーに注目した。問題に応用することである。 以前の代表者による論文でS.Langにより1974年に予想され、小林により1976年に更に一般化された有限性定理の予想が完全に肯定的に解決された。この結果から代数体上定義された双曲的多様体をいかに構成するかが次の問題となる。最近野口は増田(東工大理)との共著論文においてその様な多様体を構成するアルゴリズムを発見し、コンピュータを用いて今まで知られていなかった双曲的多様体を構成することに成功した。ここで決定的役割をはたしたのはNevanlinna-Cartanの第二主要定理である。代表者は最近、関数体上の第二主要定理を証明する事に成功し、これを用いて増田-野口により構成された双曲的多様体が関数体上定義されるとき、その有理点の有限性を証明した。同じ考え方で、代数体上の場合にS-unit解の有限性も証明された。そこでは、第二主要定理の弱型の数論版である、W.Schmidtの定理が用いられる。これから分かることは、本来の第二主要定理の数論版が証明されれば、それらの双曲的多様体上の有利点の有限性が示されることになる。これは、極めて自然な予想で、いわゆるabc-予想も含む。これからの分野の新しい方向性が出てきた。 また分担者は、一般型の複素多様体の普遍被覆のコンパクト商が再び一般型になることを示し、小林予想のSupporting evidenceをあたえた。その他の不変測度についても考察した。
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