素粒子物理学はゲージ理論を基礎として各種の相互作用を統一して来たが、いまだ重力の量子論としては、古典論と首尾一貫した形での理解には至っていない。われわれは内外で勢力的に研究されている2次元や3次元重力の重要さはもちろん理解しているが、より現実的な4次元量子重力に直接迫りたいと思った。 そこで研究代表者菅本と分担者野尻は、お茶の水女子大学学振特別研究員窪谷浩人、院生香月深雪と共に、非常に対称性が高く解ける模型である、2-form Gravityから出発して、この模型の「対称性の破れ」による相転移を通して4次元量子重力を理解しようと考えた。まず2-form Gravityからアインシュタイン重力を出すとき1つの拘束条件を解いて計量を導入しなければならないが、ストリング場を2-form Gravityに対称性を保って結合させると、その拘束条件に似た項がストリング場の質量項から出ることが解かった。これを用いて、ストリング場の凝縮の有無がアインシュタイン重力か位相的重力かを判別するというシナリオを得た。又ストリング場を導入しない場合でも、2-form Gravityにおいて、ある古典解の周りで展開してエフェクティブポテンシャルを計算すると、高温では計量の揺らぎは大きくて位相的な場合に当り、低温ではその揺らぎが小さくなって、計量が固定される事が解かってきた。従って「位相的な場の理論と量子重力とを相転移でつなぐ機構を探る」という最終目標に一歩近づいた。これらの成果は現在論文にまとめている。 又研究代表者と分担者は、院生川村昌子と共に微生物の遊泳問題へ無限次元代数を応用する仕事を続けた。この問題は変形体のゲージ理論ゆえ、重力や弦理論とも密接な関係があり、且つそれらの興味深い応用となっている。
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