本年度の当初の目標は、面代数の具体例及び一般論を作用素環論への応用を目指して研究することにあった。しかし、その後位相的場の理論への応用の可能性が明らかになってきたこともあって、やや予定とは力点のおき方が異なることになった。この方向での当面の目標は、ウェス・ズミノ・ウィッテン模型に対応する位相的場の理論のユニタリ性を証明することにあるのであるが、それはある種の面代数の表現の圏論的性質に翻訳される。そこで余純三角構造、余リボン構造、コンパクト構造などの面代数の理論の形式的側面の整備が必要になる。本年度は、具体的には以下に述べる三つの結果を得た。 1.ヤングパクスター方程式の面型の解から量子群を構成する一般的手法を開発した。そのためにある種の量子半群の族(可閉余純三角面代数)を研究し、それから量子群を構成する関手を構成した。 2.そのようにして得られた面代数が、いつリボン構造を持つかについて一般的に調べ、さらに具体例についてリボン元の表示式を求めた。 3.また、そのような面代数がコンパクト構造を持つための条件を考察した。 4.余純三角構造を持つコンパクト面代数は、さらに余リボン構造を持つことを証明した。これは、前年度に作用素環論への応用のために得たコンパクト面代数の抽象調和解析的理論の新しい応用である。
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