研究概要 |
名古屋大学グループは、揮発性物質の中でもそん存在度が大きいH_2Oを選んで、珪酸塩-水系の相平衡実験を行ってきてた。今年度は、パイロープ(Mg_3Al_2Si_3O_<12>)-H_2O系とフォルステライト(Mg_2SiO_4)-パイロープ-H_2O系の溶融実験、及び、パイロープ-H_2O系とフォルステライト-H_2O系の熱力学解析を行った。 高圧溶融実験は、名古屋大学の2000tonプレスを用いたMA-8型装置で行った。実験圧力は4.2、7.0及び12GPaである。試料は白金カプセルに封入した後、加圧、加熱、急冷、減圧を経て回収した。回収試料は薄片にした後、偏光顕微鏡、SEM、EPMAを使って相を同定した。実験結果をSilver & Stolper(1985)のモデルを用いて熱力学解析を試みた。このモデルでは、つぎの三つの平衡を考慮する。(1)メトル中の水和反応:Silicate(Melt)+H20(Melt)=2 Silicate-OH(Melt)。(2)Silicateの溶融:Silicate(Solid)=Silicate(Melt)。(3)H20の溶解:H20(Gas)<=>H20(Melt)。(1)の平衡定数K_1からは反応の進行度の他にメルトの全H_2O量が分かり、(2)から固-液相のリキダスにおけるメトル中のsilicate種の量が分かる。また、(3)の平衡定数K_2からは気-液相のリキダスにおけるメルト中のH_2O種の量が分かる。解析結果は、パイロープ-H_2O系に関するパラメータとしてK_1=0.17,K_2(0.5 GPa)=0.069,V_0=16.0 cc/molが算出された。フォルステライト-H_2O系に関しては、K_1=0.37,K_2(0.5 Pa)=0.062,V_0=15.8 cc/molが算出された。計算で得られるソリダスが実験結果とよく一致することから、今回の熱力学解析法が幅広い圧力範囲で有効であることを確認した。
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