研究概要 |
(1)高圧分配実験:2.6GPa下での珪酸塩(rhelzolite)メルト-金属鉄間での窒素の分配を調べる実験を行った。実験の結果、窒素はかなり親鉄性が高いことがわかった。2,6GPaでの分配係数(C(鉄)/C(珪酸塩))はそれぞれ22及び9であった。また、三酸化鉄を加えてより酸化的な雰囲気で分配させたものでは2GPaにおいて分配係数は114であった。窒素と酸素は珪酸塩中で排他的な関係にあるのではないかと推測する。すなわち、両者は珪酸塩中で同じサイトを奪い合う関係にあるのではないかという予想を裏付けるデータが得られた。データ数がまだ少なく定量的議論に関しては今後の追試が期待されるところであるが、地球に含まれる窒素の相当量が金属鉄コアに含まれているのではないか、という仮説の検証に向けて興味深い結果が得られた。 (2)数値実験:隕石母天体のような小さな(〜100Km)天体中の窒素・炭素・水素の輸送について数値シミュレーションを行った。本実験では熱力学データおよびコンドライト隕石のガス浸透率データ、揮発性元素の初期分布などのパラメータを組み合わせて様々な計算を行った。その結果、キャリアガス(例えば、COガス又はH2ガス)の流量、ガス浸透率などのパラメータに大きく依存することなく金属相が窒素を保持するのに大きな役割を果たすことがわかった。また、この際、炭素も窒素同様親鉄性の振る舞いをすることがわかった。
|