【目的】 岩石のもつ微視構造がその力学挙動に与える種々の影響のうち、本研究はその異方性を取り上げ、強度の異方性と岩石の示すフラクタル性との相関を検討することを目的としている。フラクタル次元に関してもさまざまな次元が提案されているが、どの様なフラクタル次元がどの微視構造とより良い相関を示すか、また、強度との関係はどうか、さらに、フラクタル次元同士の相関などまだ未検討のものも多い。そこで本研究では岩石の二三の微視構造のフラクタル性とその強度との関係を異方性(石目・堆積面)をパラメータとして検討した。 【本年度の研究経緯と成果】 比較的顕著に異方性を示す岩石として花崗岩と溶結凝灰岩を取り上げ、これらの微視構造にフラクタル次元を適用してそのフラクタル性の程度や異方性を比較した。すなわち、花崗岩においてはマイクロクラックの分布についてその配向の次元および鉱物結晶粒の形状の次元を求めた。また、凝灰岩では空隙に関する形状の次元を求めるとともに、両岩石ともに圧裂強度試験を基本としてそのフラクタル次元と異方性の関係を調べた。なお、圧裂試験は破壊面の方向をいわば指定する試験であるので、異方性によるクラックの伝播方向等を調べるためには必ずしも適当ではない。そこで溶結凝灰岩については厚肉円筒試験片のスリーブフラクチャリングを大気圧下で実施したが、これは地熱開発のための水圧破砕に及ぼす異方性の影響を知るための基礎的知見をあたえる。 得られた主な結果は次のようである。 (1)花崗岩や溶結凝灰岩のクラックには配向の次元、鉱物や空隙には形状の次元が圧裂強度や異方性のパラメータになり得る可能性がある。 (2)あらかじめシミュレーションで検討しておけば、次元の値からを他のパラメータが求められる。 (3)溶結凝灰岩の大気圧下のスリーブ破壊強度と破壊伝播方向の異方性は圧裂強度のそれと共に正の相関がある。
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