研究概要 |
高次フラーレンについて、その5員環の相対的幾何学配置によって特徴づけられる、「フェイゾンライン」という概念を基に、各異性体の電子構造の安定性を調べた。 また、グラファイトの蜂の巣格子に、7員環が入ることによって多様性を増す、炭素ネットワークの形態学を、幾何学的見地から議論し、フラーレンド-ナツ、螺旋状チューブ、スポンジ状グラファイトなどについて、その構造の多様性と、幾何学的パラメータによって電子状態のいかに変化するかを、系統的に調べた。フラーレンド-ナツでは、NBO状態をもつ分子が、普通のフラーレン分子に比べて遙に多く存在すること、螺旋状チューブでは4つの構造を決めるベクトルに関して、規則的に電子状態が変化すること、スポンジ状グラファイトにおいても幾何学的パラメータによって電子状態は劇的に変化し、とくにフェルミ面付近に集中する状態を持つ興味ある構造が見つかったなどの結果を得た。 またC_<60>ポリマーについてそのバンド構造の変化をパイ共役条件と電子数を変えながら、Su-Schrieffer-Heeger型の電子格子相互作用のある半経験的模型を用いて議論した。その結果中性C_<60>ポリマーでは、パイ共役条件の変化にともない直接ギャップ絶縁体から金属に亘って電子構造が変化することが分かった。1分子あたり1個電子をドープしたC60ポリマーはパイ共役条件を変えていつも金属であるが、ポーラロン効果によって中性系のHOMO,LUMOのエネルギー差は小さくなる。しかし1分子あたり2個電子をドープしたC60ポリマーは絶縁体となる。ポリマー鎖方向のパイ共役が弱いとき系は直接ギャップ絶縁体であるが、パイ共役が強くなると間接ギャップ絶縁体となることが分かった。
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