研究概要 |
(1)エン反応を用いるC_<60>のフェノール誘導体の合成:C_<60>と4-アリルフェノール誘導体との超高圧下(12000気圧)におけるエン反応を用いて合成された1:1付加体を酸処理すると、飽和5員環の縮環した、全く新しいC_<60>誘導体に変換されることを見いだした。これは、C_<60>核上のメチン水素の高い酸性に基づく、オレフィン部の分子内環化によるものであることが明らかとなった。 (2)アセチレン結合をもつC_<60>およびその陰イオンの合成と反応:アセチレン炭素がC_<60>核に直接結合した、種々の誘導体の合成法を確立した。またこれらから導かれる安定な炭素陰イオンについて、その性質および化学反応性を明らかにした。特にトリメチルシリルエチニル誘導体の場合、F^-イオンを用いて脱シリル化するとプロトン移動により、容易にニチニルC_<60>^-陰イオンを生じる簡便な陰イオン発生法を見いだした。 (3)RC_<60>^-陰イオンと安定炭素陽イオンとの反応:RC_<60>^-陰イオン(R=t-Bu,-C≡C-C_6H_<13>)と無置換ならびに1,4-ジシクロプロピルートロピリウムイオンとの反応を行ない、反応の位置選択性が陰イオンの立体因子により大きく支配されることを見いだした。また、共有結合性の生成物が溶媒極性に応じてイオン解離反応を起こすことを明らかにした。 (4)C_<60>とヒュッケル系炭素陰イオンとの反応:C_<60>とフルオレニル(Fl)、インデニル、およびシクロペンタジエニル陰イオンとの反応を行ない、特にFl^-との反応では、反応条件により、極めて例の少ない1,4-付加反応が起こることを見いだした。 なお、これらの反応により新しく得られたC_<60>誘導体については、CV法により酸化還元特性を検討し、半経験的分子軌道法による理論計算に基づいて結果を解析した。
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