金属フラーレン含有のすすから効率的に金属フラーレンを単離精製する方法を確立し、モノ-金属フラーレンおよびビス-金属フラーレンの性質と構造を研究した。研究の対象として、ランタン、イットリウム、ガドリニウム、セリウムに金属元素は限定したが、いづれの元素のモノ-金属フラーレンの吸収スペクトルや酸化電位及び還元電位も非常に類似しており、その電子状態は理論的予測とは異なり、いづれもよく類似しており、金属元素の価数はほぼ+3価であることを明らかにした。 構造に関しては、ランタン金属フラーレンを中心に研究を行ったが、EXAFSスペクトルから、モノ-金属フラーレンであるLaC82においては、La原子がフラーレンケージに内包されている構造を示唆する結果を得た。位置としては6員環炭素に近接した位置で、La-Cの第一近接距離、第二近接距離はそれぞれ、2.45、2.94Aであることを明らかにした。ビス-金属フラーレンに関しても研究を行ったが、EXAFSの解析からは、内包構造を考えると、ランタン原子のLaの配位数がかなり大きくなるなどの問題点が生じ、EXAFSのみから、構造を決定することが不可能であることが明らかになった。金属フラーレンのケージの構造を明らかにするため、単結晶の作成を試みた結果、硫黄との混晶として単結晶を作成することに成功した。結晶の大きさは小さいために、実験室系のX線回析装置では解析に充分な数の反射点を測定することは不可能であったので、現在SOR光などを利用した再測定を計画中である。 フラーレンケージの強さを調べるために、核反応をケージ内で起こし、反跳した原子がゲージに衝突することでどの程度破壊するか研究した。その結果、ケージは20eV程度の強さを持つことを明らかにした。
|