当初計画中の主要設備を認めて頂けなかったことにより、本年度の実施計画を大幅に変更せざるを得なかった。すなはち、現有のアーク反応炉を用いて、少量ながらも新種のフラーレン化合物の合成に専念し、電子顕微鏡観察による物質同定ならびに内包結晶のサイズ分布、低温X線回折による内包結晶の格子振動等を明らかにした。これらの成果は、米国応用物理学会誌にレター一報と本論文一報としてすでに発表されている、なお現在、レター一報と本論文一報を投稿中である。前者は、ダイアモンドを出発物質とするフラーレン・ファミリの合成であり、従来のグラファイトを出発物質とした場合に比較し、約2倍の生成率が得られた。また、生成率のダイアモンド濃度依存性から、フラーレン生成の機構に関する新たな知見を得ることができた。後者は、カーボン・ナノチューブに内包された炭化タンタルの超伝導発現機構に関するものであり、結晶表面での原子再配列ならびに格子振動ソフトニングを示す事実を明らかにした。
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