研究概要 |
本研究では光学活性錯体をセルフアセンブルによって直接電極表面に結合させ、それによって生じた不斉テンプレート場で不斉反応を誘起することを目的とした。この目的のためにラセミ体[Os(bpy)_2(dpe)Cl]^+ (dpe)≡4,4'-dipyridylethaneを合成し、ラセミ体を光学分割することにより△,Λ[Os(bpy)_2(dpe)Cl]^+を得ることが出来た。更に△-[Os(bpy)_2(dpe)Cl]^+修飾PT電極によって不斉場界面を持つ電極を構築することが出来た。 上記ラセミ体[Os(bpy)_2(dpe)Cl]^+ (dpe)≡4,4'-dipyridylethaneは文献にしたがって合成し、このラセミ体をCM-Sephadexカラムにpotassium antimony tartarate飽和水溶液で展開することにより光学分割を行い、△とΛ-[Os(bpy)_2(dpe)Cl]Clを分離した。 △-[Os(bpy)_2(dpe)Cl]ClのCH_3CN溶液にPt電極を浸してmonolayerセルフアセンブルした後△とΛ-[Os(phen)_3]^<2+>を含む0.05M TBAP/CH_3CN中で△-[Os(bpy)_2(dpe)Cl]ClをセルフアセンブルしたPtと未処理PtとのCVを比較したところ△-[Os(bpy)_2(dpe)Cl]^+をself-assembleしたPtでは未処理Ptより酸化電流が増加しているがΛ-[Os(phen)_3]^<2+>を溶液に含む場合には電流が減少していることを示している。これは△-[Os(phen)_3]^<2+>の酸化反応は速められたが、Λ-[Os(phen)_3]^<2+>の酸化反応は逆に抑制されたことを物語っている。この速度論的考察のために購入備品frequency extenderを用いている。 以上の結果は電極表面に不斉場を構築することが出来たことを示しているので、所期の目的を達成したことになる。更に不斉場を構成する錯体を変えることにより光学効率の高い不斉場を構築することを行い、不斉反応のメカニズムを解明したい。
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