研究概要 |
我々は、一分子内に電子受容部位(A)、光増感部位(S)、そして電子供与部位(D)を持つ両親媒性三つ組分子A-S-Dの単分子膜で修飾した金電極が、光ダイオードの機能を示すことを見いだした。この光電変換機能の効率をあげるために、単分子膜内での電子移動反応場の設計と制御の観点から、本年度は以下の項目について検討した。1)S-AおよびS-D化合物群の合成と光誘起電子移動の距離依存性の評価; S部位にはピレン、A部位にはビオロゲン、そしてD部位にはフェロセンを用い、S-A間の炭化水素鎖数は、4,6,8,11,および16で、S-Dは6,7,および9である。これらの化合物群の分子内電子移動速度は、S部位のピレン励起一重項状態の蛍光寿命測定から求めた消光速度定数によって評価した。2)剛直構造を有するビシクロ[2.2.2]オクタン結合鎖で連結したS-D化合物の合成と光電子移動の評価; 剛直なS-D化合物は、S部位にはナフタレン、D部位にはフェロセン、そして剛直な結合鎖としてビシクロ[2.2.2]オクタンを用いた。合成方法を種々検討した結果、Friedel-Crafts alkylation法を用い、そのルイス酸触媒の種類を選択することによって各部位を選択特異的に連結できることが明らかになった。得られた剛直なS-D化合物は、NMR測定からα体とβ体の混合物であるが、蛍光寿命測定結果はα体とβ体の蛍光寿命がほぼ同じ値であることを示唆した。3)光誘起電子移動反応の自由エネルギーギャップΔG°依存性の検討を目的としたS-AおよびS-D化合物群の合成; 本年度は、ビオロゲンに比べてさらに約0.5〜1eV還元電位が低いNi-サイクラム錯体誘導体を有するS-A化合物群の合成を開始した。
|