研究概要 |
アルコール脱水素酵素を電極触媒に用いて、酵素が触媒する自発反応の逆反応を電解的に行わせることを調べている。本年度は水溶液に難溶性の化合物として2-ブタノン,2-ペンタノン,ベンズアルデヒド、ならびにプロピオフェノンを反応基質に用いて、これらを相当するアルコール化合物に還元する反応を検討した。酵素は中性の水溶液で働くので、水溶液へ可溶させるために、5%の3級ブタノールを用いる方法と、2%のトリドンXを用いる方法を検討した。酵素として、アルコール脱水素酵素EC1.1.1.2を、その補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを、ならびに、これを再生する酵素としてフェレドキシンNADPリダクターデを用い、電子伝達剤としてメチルビオロゲンを用いると、いずれの反応基質についても90%以上の電流効率で、相当するアルコールに還元できることが分かった。そして、アセトンフェノンの還元による1-フェニルエタノールの生成,ならびにプロピオフェノンの還元による1-フェニ-1-プロパノールの生成では、100%の不斉収率で反応が起こることが見い出された。これに対して、2ブタノン,2-ペンタノールへの還元では、3%の不斉収率しか得られなかった。これらの電解結果から、反応基質としてのケトンのカルボニル基に結合している官能基が大きく異なっているものほど不斉反応が起こり易くなることが示唆され、酵素を電極触媒に用いる電解不斉合成のひとつの指針を得ることができた。
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