本年度は陰極側で分子状酸素を活性化させ、脂肪族オレフィンのエポキシ化が達成できる反応系の探索を行った。その結果、バナジルアセチルアセトンの共存下でDMFを溶媒に用い炭素電極上で分子状酸素の電解還元を行うと、シクロオクテン、シクロヘキセンから対応するエポキサイドが得られることが明らかになった。本年度に購入した質量分析計データ処理装置ならびにソフトウェアライブラリーを現有のキャピラリークロマトグラフ装置に校費で購入した質量分析計検出部ならびに制御部を組み合わせることによりガスクロマトグラフ質量分析計システムを構成し、電解生成物の精密な同定・分析を試みた。その結果、スチレンを原料とした場合にはアルデヒド、カルボン酸などが多量に副生したが、脂肪族オレフィンのエポキシ化ではエポキサイドが選択的に生成することが判った。シクロオクテンのエポキシ化について電解条件の最適化を試みた結果、最適条件下では電流効率75%でエポキサイドが得られた。 陰極室で発生する活性種について詳細に調べた結果、分子状酸素の陰極還元で過酸化水素が電流効率89%で生成すること、過酸化水素とバナジルアセチルアセトンから活性種が生成すること、エポキシ化の後はバナジウムは5価に変化し不活性化することが明らかになった。数%の水を共存させて電解エポキシ化を行うと触媒の再生が部分的に起こることを認めた。
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