導電性高分子の導電率や性能を低下させる原因として分子鎖の折れ曲がりなどによるπ共役系の切断や分子の並びの無秩序さなどが挙げられる。そこで分子全体に環境構造が広がり、磁場の影響を受け易いと考えられるラダーポリマーに着目し、比較的容易で安定なフィルムが得られる電極酸化による電解重合を6T磁場下で行い、磁場による構造制御が可能であるかどうかを明らかにすることを目的とした。 50mM o-hlenylenediamine(oPDA)に支持電解質として0.1M Na_2SO_4を加えた0.5M H_2SO_4酸性水溶液を電解重合用電解液とし、6ステラの磁場中及び零磁場で白金電極を作用極として電解重合した。 oPDA白金複合電極のインピーダンス測定の結果からCole-cole plotsが得られた高周波領域において電荷移動律速の半円がみられ、中周波領域では傾きπ/4の直線を示した。Randles型の等価回路を測定し、各パラメーターについて解析した。 電極表面上の膜の拡散係数は零磁場で作製された膜の方が大きい値が得られ、磁場の拡散係数に及ぼす影響がみられた。 又、膜の抵抗値においても磁場の影響が観測された。すなわち、零磁場で得られた膜の抵抗は6ステラの磁場中で作られた膜の抵抗値より小さかった。磁場の向きと電極表面のなす角度により、電極表面上の膜の抵抗値にも差が認められた。磁場の向きと電極のなす角が平行の場合抵抗値が大きく、膜の厚さに依存せず、一定値を示した。 磁場の向きと電極のなす角が直角の場合、抵抗値は平行の場合より小さく、又、膜厚が増加すると減少した。 以上、磁場中での芳香族の電解重合では、構造の制御が可能なことが明らかになった。
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