研究概要 |
14族有機金属化合物から光誘起電子移動によって生成する活性種の化学的特性を明らかにし、その合成化学的展開を図ることを目的として、芳香族炭化水素や[Ru(bpy)_3]^<2+>をレドックス型光増感剤とするケテンシリルアセタールおよびシクロプロパノンシリルアセタールの電子不足型アルケンへの光付加反応を行い、以下の知見を得た。 1.アルゴン雰囲気下、1,1-ジシアノ-2-フェニルエテンとケテンシリルアセタールとを含むアセトニトリル溶液にピレンを光増感剤として>280nm光を照射すると、1,1-ジシアノ-3-メトキシカルボニル-2-フェニルブタンがほぼ定量的に生成した。この光反応はピレンのかわりにフェナントレンや[Ru(bpy)_3]^<2+>を用いても進行し、4級炭素を位置選択的に導入できることを明らかにした。 2.ケテンシリルアセタールはピレンを光増感剤に用いると、電子受容性の小さな1-シアノ-2-フェニルエテンや1-メトキシカルボニル-2-フェニルエテンと速やかに反応し、位置選択的に付加体を生成したまた、1,1-ジシアノ-2-フェニルエテンとシクロプロパノンシリルアセタールとの光反応では、フェナントレンを光増感剤として用いると効率よく付加体を与えることを見出した。 3.これらの光付加反応はいずれも溶媒効果や蛍光挙動の解析などから芳香族炭化水素または[Ru(bpy)_3]^<2+>をレドックス型光増感剤とする光誘起電子移動を鍵過程として進行し、光増感剤および基質の酸化還元電位によって反応性が大きく支配されていることを明らかにした。
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