研究概要 |
近年、機能性電極の研究が盛んになり、センサーの開発や不斉電解合成が行われてきている。本研究では、蒸着重合法により作成したポリフタロシアニン薄膜に種々の糖を導入し、糖化ポリフタロシアニン修飾電極を作成した。また、これらを用いて、チトクロームP-450モデルに基づく不斉エポキシ化を行い、その機能について検討した。 糖化ポリフタロシアニン修飾電極はポリフタロシアニン薄膜を強酸性イオン交換樹脂存在下、糖水溶液中で1日撹拌することにより作成し、5mm^2に切断して電極反応に用いた。反応はH型セルを用い、以下のような条件下で行った。対極:Pt、参照電極:SCE、電解液:0.2M LiClO_4/CH_3CN/CH_2Cl_2=4:1 一原子添加酵素として知られるチトクロームP-450のモデル反応として、スチレンの不斉エポキシ化を行った。本研究では、糖修飾電極が(1)ヨウ化ベンゼンをヨードソベンゼンに酸化する作用電極になり得ること、及び(2)不斉エポキシ化反応の不斉場として機能することについて確認した。 ニトロ基を含むポリフタロシアニン修飾電極ではスチレンオキシドの不斉は見られなかったが、糖修飾電極においてはいずれも不斉が発現した。TPPFe(III)Cl非存在下において、グルコース修飾電極およびガラクトース修飾電極でS体のシチレンオキシドが得られた。これは電極表面上で一部生成していると思われる銅ポリフタロシアニンが活性点となり、チトクロームP-450と類似の反応を進行させたためと考えられる。興味深いことに、この反応系にチトクロームP-450と類似の反応を持つことが知られているTPPFe(III)Clを共存させるとR体のスチレンオキシドが得られるようになった。このことより、活性点が電極表面上の糖残基近傍で進行していることが理解される。不斉収率は糖残基の種類に影響され、特にガラクトース修飾電極ではe.e.46.1%という比較的高い不斉収率を得た。糖による不斉誘導の影響を検討した結果、2,3‐位の水酸基が不斉識別に関与していることが推定できた。
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