本研究ではアセチレン基を有するヨードニウム塩について、その高い反応性を利用したアルキニル銅試薬とのカップリング反応を検討し、液晶性ジアセチレン誘導体の合成へ応用した。 (1)アルキニルヨードニウム塩の合成 種々のアルキニルヨードニウム塩は、筆者らが開発した高反応性ヨウ素試薬[PhIO-TfOH]、[PhI(OAc)_2-2TfOH]、[o-OIC_6H_4CO_2H-2TfOH]、およびKoser試薬PhI(OH)OTsを用いて、末端アセチレンあるいはアルキニルシラン誘導体から合成した。アルコキシ基を有するアルキニルヨードニウム塩の合成に関しては、PhI(OH)OTsが良好な収率を与えた。 (2)液晶性ジアセチレン誘導体の合成 長鎖アルコキシ基を有するヨードニウム塩と有機銅試薬との反応は、容易に進行し、カップリングした長鎖アルコキシ基を有するアセチレン誘導体が生成する。アルキニル銅試薬との反応では、ジアセチレン誘導体が得られ、これは液晶性を示すことがわかった。炭素数が8、10、および12個の場合について検討し、結果を次の表に示した。カップリング反応は容易に進行するが、アルキニル銅試薬の置換基により大きく左右することが判明した。すなわち、電子供与性の置換基の場合選択的に非対称ジアセチレン誘導体が生成したが、電子吸引性基の場合にいは非対称ジアセチレンよりもホモカップリングした対称ジアセチレン誘導体が優先的に生成した。 長鎖を有しないヨードニウム塩に対しては、選択的にカップリング反応が進行した。アルキル基、アリール基のいずれの場合も、ホモカップリングに対して、高いヘテロカップリングが認められた。
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