研究概要 |
α位の典型金属のケイ素、ゲルマニウム、スズ等の官能基を導入したビニルホスホナ-トはビニルシラン、ビニルゲルマン及びビニルスタナンとしての特性とビニルホスホナ-トとしての特性の両反応性を兼ね備えているところから、極めて有用な試薬として期待されるにもかかわらず、未開拓の分野として残されていた。本研究では、 (1)β位にアルキルチオ基(1a,b)、アルコキシ基(1c)、アリール基(1d)等の官能基を有するビニルホスホナ-トを合成した。 (2)合成したビニルホスホナ-トと有機リチウム化合物から、α-リチオビニルホスホナ-トを調製した。続いてアルデヒドとのWittig-Horner反応より、β位にエタンジチオ基及びプロパンジチオ基を有するアレン中間体が生成し、さらにラジカル的な[2+2]シクロ付加反応によりシクロブタン化合物が立体特異的に得られた。 (3)α-リチオビニルホスホナ-トとトリオルガノメタルハライドとの反応により、α-(トリオルガノメタロ)ビニルホスホナ-トを高収率で合成することに成功した。 (4)ビニルシラン、ビニルゲルマンはアシルカチオンと反応して、α-アシルビニルホスホナ-トを高収率で与えた。 (5)α-シリル-β-エトキシビニルホスホナ-トは種々の求核試薬のマイケル付加反応を受け、その後EtO基の脱離を伴い、立体特異的にβ-置換α-(シリン)ビニルホスホナ-トを与えた。 (6)1aよりα-ヨードビニルホスホナ-トの合成に成功した。α-ヨードビニルホスホナ-トはPd触媒存在下、末端アセチレン類と温和な条件で容易に高収率でクロスカップリング生成物を与えた。 以上のごとく、本実験は初期の目的を果たすことに成功したと言える。
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