研究概要 |
本重点研究の計画に従い、ヒドリドルテニウム(II)錯体[RuClH(CO)(PPh_3)_3](1)とアリルアルコール類及び有機シアノ化合物との反応について研究した。 錯体1は脱水メサリルアルコールと室温で反応し、挿入型反応生成物[Ru(CH_2CHMeCH_2OH)Cl(CO)(PPh_3)_2](2)を生成した。この反応を80℃で行うと、メタクロレインを配位した0価ルテニウム錯体[Ru(η^4-CH_2=CMe-CH=O)(CO)(PPh_3)_2](3a)とホスホニウム塩[Ph_3P^+CH_2CHMeCH_2OH]Cl^-(4a)が単離された。錯体3a及び4aについては、単結晶X線構造解析により確認した。 錯体1と含水メサリルアルコールとを80℃で反応させると、3a、4aはほとんど生成せず、トランス及びシス型のイソブチラトルテニウム(II)錯体[RuCl(Me_2CHCO_2)(CO)(PPh_3)_2]が得られた。このとき、反応液からイソブチルアルデヒド、イソブチルアルコール、メタクロレインが検出された。イソブチラト錯体は1とイソブチルアルデヒドと水の反応でも生成することが確かめられた。 錯体1を市販のアリルアルコールと反応させると、2分子のアルコール成分が異性化、付加、脱水素を伴って結合した型の2-メチルペンタン-1,3-ジオナト型錯体[RuCl{OCH=CMe-C(=O)C_2H_5}(CO)(PPh_3)_2](5)が得られた。一方、錯体1と脱水アリルアルコールとを80℃で反応させると、メサリルアルコールの場合に類似した0価ルテニウム錯体[Ru(η^4-CH_2=CH-CHO)(CO)(PPh_3)_2](3b)とホスホニウム塩[Ph_3P^+CH_2-CHMeCH_2OCH_2CH=CH_2]Cl^-(4b)が得られた。 錯体1は水の存在下、過剰のベンゾニトリル類と反応して、6員環キレート型のN-アシルアミジナト錯体[RuCl{O=C(C_6H_4R^<1->p)N=C(C_6H_4R^2-p)NH}(CO)(PPh_3)_2](6)を主生成物として与えた。それらのうち、p-トルニトリルより生成する錯体6a(R^1=R^2=Me)の構造を単結晶X線構造解析で明らかにした。また、脱水したニトリルとの反応ではN-アシルアミジナト錯体は生成せず、キレート配位子の酸素原子が水に由来することが判かった。p-トルニトリルとベンズアミドの混合物との反応ではN-ベンゾイル-p-トルアミジナト錯体6b(R^1=H,R^2=CH_3)が生成した。
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