研究概要 |
本研究はシクロペンタジエニル金属錯体のシクロペンタジエニル(Cpと略す)基を修飾し、そこに生じる錯体反応場の電子的、立体的環境の変化と錯体の示す触媒活性の相関を明らかにし、より優れた触媒を設計することを目的として行っている。本年度に得られた結果を次に示す。 1.既にアルキル置換Cp環をシリレン架橋した配位子よりなるジルコノセンあるいはハフノセンジクロリドのうちC_2対称のものはプロピレンのアイソタクチック重合の優れた触媒となることを明らかにした。これらのメタロセンの合成において常に副生するアイソ重合不活性なメソ体の生成を抑制する方法の開発を目的として昨年に引き続き実験を行った。Me_2Si架橋部分からβ位にt-Bu基をまた、α位にi-Pr基を導入することによりdl/meso比81/19を達成したが触媒活性の著しい低下が認められた。X線結晶解析によりこの錯体はC_2対称から大幅にずれていることがわかった。α位とβ位にともにi-Pr基をもつ錯体の合成を試みつつある。 2.Cs対称の架橋メタロセン錯体はプロピレンのシンジオクタチック重合触媒になることが明らかにされている。本研究ではCp基と2,3-ジメチルインデニル基をMe_2SiあるいはMe_2で架橋した偽Cs対称のメタロセン錯体を合成しプロピレンのシンジオ重合特性を調べた。重合活性、立体制御能ともにMe_2C>Me_2Siの傾向が認められた。 3.Cp基およびインデニル(Indと略す)基をもつ新規なイリジウム錯体Cp(PhC_2Ph)IrMe_2,Ind(PhC_2Ph)IrMe_2を合成しPh_3P,CO,CNRとの反応性を比較した結果、Ind錯体がより高い反応性を示すことを見いだした。今後、イリジウムやロジウムのInd錯体の新規触媒作用の探索を試みる。
|