研究概要 |
リチウム様イオンに対して、エネルギー準位、振動子強度、電子衝突励起断面積の既存データを比較検討し、必要に応じて断面積の計算も行い、現在もっとも信頼できる原子データの組合せを選び衝突輻射モデルを完成した。 WT-3トカマク・プラズマの不純物酸素、炭素のリチウム様イオンからの発光線3^2S-3^2Pの強度を、絶対感度が較正されている可視・紫外分光器で測定し、上準位イオンの密度分布を決定した。平面焦点型の小型極紫外分光器で、トカマク中心面からの2^2S-3^2P発光線強度を測定し、分岐線対法によって酸素、炭素それぞれの遷移の波長において分光器の絶対感度を較正した。極紫外分光器によって周辺の再結合プラズマからの発光スペクトルを観測し、それを中心面でのスペクトルから差し引いて純粋に電離プラズマ成分のみを分離した。。衝突輻射モデルによる計算から3^2S,3^2D,4^2S,4^2P,4^2D,4^2F準位のポピュレーションを計算し、それぞれを上準位とし基底状態へ遷移する発光線強度を計算した。それらと極紫外分光器で観測されたスペクトル線強度から各波長における分光器の感度を推定し、10-31 nmの範囲で絶対感度を較正した。 周辺プラズマにおける再結合プラズマ成分はヘリウム様イオンと水素原子ないし分子との衝突による荷電交換再結合によると判断された。ヘリウム様イオン密度はMISTコードにより計算され、水素分子と原子の密度はバルマ-線強度から決定された。衝突輻射モデルプログラム中で再結合速度係数を調節して、計算されたスペクトル強度が実験値と一致するようにし、速度係数を決定した。衝突エネルギーはイオン、水素ともに(2-3)eV/amuであり、本実験はこのような超低エネルギー衝突による荷電交換再結合の断面積の最初のデータである。
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