本研究に関連した平成5年度重点領域公募研究におけるAr^<a+>-H_2(q=6-11)衝突系の系統的な電子捕獲反応断面積測定において、低エネルギー電子捕獲反応では一電子および二電子捕獲反応断面積が衝突エネルギーの減少と共に増大するエネルギー依存性を示し、多価イオンと標的間に誘起する分極力により衝突軌道が曲がり旋回衝突をするいわゆるオ-ビティング散乱効果によりE^<-1.2>なるエネルギー依存を持つLangevinの断面積に漸近的に近づいていく現象を見いだした。 本研究ではAr^<na+>-He(q=6-11)衝突系の一電子、二電子捕獲反応断面積測定においてもH_2標的と同様にオ-ビティング効果による低エネルギー側における反応断面積の増大を確認できた。そして更に、標的が入射イオンより質量が重く分極率の異なるC^<4+>-Ne、Ar、Krの各衝突系における一電子、および、多電子捕獲の反応断面積測定を行い、電子捕獲入射イオンのイオン強度測定から得られる前方散乱による電子捕獲反応断面積にはH_2やHe衝突で観測された低エネルギー側での増大現象は現れず、電子捕獲反応の後方散乱による標的イオン強度測定で低エネルギー側で反応断面積が急増する現象を見いだした。これらの実験結果から低速多価イオン衝突では、入射イオンの電荷数が大きく標的の分極率が大きい衝突系ほどより高い衝突エネルギー領域でオ-ビティング散乱の影響を受けていること、そして、電子捕獲反応では捕獲電子数が多い多電子捕獲反応ほど衝突エネルギーのより高い領域で前方散乱より後方散乱においてオ-ビティング散乱が重要な役割を演じている実験的証拠が得られた。またC^<4+>-Ar、Kr衝突系ではAr^<4+>とKr^<4+>イオンの検出によりC^<4+>を直接中性化する共鳴的な四電子捕獲反応が起ることも確認された。
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