研究概要 |
新たに電子衝撃型イオン源を制作し、これを光-イオン合流装置に設置した。これを用いて高エネルギー物理学研究所PFのBL-3Bにおいて、Xe^+標的の4d励起・電離を伴う光電離断面積の相対値を60-160eVのエネルギー範囲で測定した. 光吸収により生成されるXe^<2+>とXe^<3+>信号強度の光エネルギー依存性を測定したところ、(1)71eV付近に、4d->np遷移と考えられる構造、(2)75eV付近より87eVにかけての大きな構造、(3)87eVより93eV付近の構造,が見られ,また,この測定エネルギー範囲のほぼ全体が(4)d電子電離特有の「巨大共鳴」ピークに支配されている,ことがわかった。 得られた結果を,中性Xe標的の場合の同様な測定結果と比較すると,Xe^+標的の特徴は(2)と(3)であることがわかった。中性Xeの場合には、80-95eV付近に4d^<-1>5p^<-1>に収斂する多くの状態が存在することが知られている。Xe^+標的のイオン化効率曲線に見られる(2),(3)の特徴は、同様な状態が強く励起されていることを示唆しているものと思われる。これは、中性Xeが閉殻構造を持っているのに対し、外殻に空孔ができたことによる電子相関の変化の反映であると考えられよう. 今回はXe^+標的についてのみ測定を行ったが、制作したイオン源からはXe^<2+>も充分な強度が得られた。今後Xe^<2+>についても実験を行い、等核系列でのデータを比較することにより、電子相関の変化についての情報を得る予定である.
|