本年度の研究活動は以下の通りである。 (1)分析資料の追跡収集=昨年度収録した10本の資料に加えて同様の方法でセミナー6本分(各60分)の資料を収録した。 (2)分析対象資料録音テープの書き起こし上記のセミナーでの対話部分の音声を文字化した。作業は本重点領域のワーキンググループで検討された文字表記法にしたがって行った。 (3)第1回A班研究会に参加 (4)第2回全体集会で発表 (5)最終報告書では対話資料がパラフレーズ-スの起こる理由を考え、コヒージョンのあるディスコースの中でどのようなパターンで現れるかを分析し、以下のような結論に達した。セミナーの対話は情報内容の正しい伝達が目的であり、発表者と聞き手の間にある専門知識、一般知識の共有によって相互理解に至り、しかも両者が一定時間内に獲得する。情報量が多ければ多いほど理想的なセミナーであるという基本的な視点で以下のことを提示した。 (a)語のレベルではコロケーションシソ-ラスとの対照を含む位相マップを作成した。 1.同じ語句の繰り返しや他の語への言い換えが行われるなどのパラフレーズのある部分を記述した。 2.そこで用いられる語句がシソ-ラスの分布構造の中でどう対応しているか、またその頻度はどうかをみ、日本電子化辞書の概念辞書と対応させる。 3.その位相マップを記述し、多様される語の頻度を示し言い替えのパターンを分類した。 (b)文レベルでは誤解の起こる場面あるいは起こると推定する話者の思考プロセスを構文的な視点から記述した。 (c)ディスコースとしてのまとまりのあるデータをコヒージョンの観点から分析し理想的対話のモデルを記述した。
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