研究概要 |
楕円銀河の進化の理解は本研究課題である「銀河団と形成と化学進化」の解明の基礎である。X線天文衛星「あすか」による楕円銀河の高温ガスの分光観測は鉄の組成が太陽値の数十%しかないことを明らかにした。これは光学観測で得られている星の鉄組成が太陽の数倍であることと矛盾する。本研究では楕円銀河には鉄組成の動径勾配が見られることに着目して光学観測資料に補正を施し、楕円銀河の鉄組成を再評価して太陽とほぼ同程度の値を得た。この値は依然としてX線観測の結果より高い。この原因は楕円銀河ガスのように比較的低温の天体の鉄組成を評価する際に使用される、鉄のL輝線の原子物理学的量の知見が不十分であるためである(Arimoto,Matsushita,Ishimaru,Ohashi,& Renzini 1995;Astrophysical Journal誌に投稿予定)。 楕円銀河の鉄組成を再現する銀河風モデルを再構築し、楕円銀河が銀河団ガスを汚染する鉄の総質量を求め、これが銀河団ガスに含まれる鉄の質量を定量的に再現することを示した(Ishimaru & Arimoto 1995;準備中)。 楕円銀河の銀河風モデルをもとに1500Å-3.5μにある波長帯のスペクトル・エネルギー分布(SED)の進化を計算し、高赤方偏移にある電波強度の強い楕円銀河のSEDがz【greater than or equal】2では銀河風発生前の星生成期のモデルと、そしてz【greater than or equal】2までは銀河風発生後のモデルとよく一致することを見い出した。これは楕円銀河の起源としての銀河風説を強く支持する(Yoshii,Arimoto,Taniguchi,& Renzini 1995 銀河進化における星生成の鍵となる水素分子雲の形成と分布を観測と理論の両面から調べ、銀河における分子雲の分布を定量的に再現することができた(Sofue,Honma,& Arimoto,1995;Astron.& Astrophys.印刷中;Honma,Sofue,& Arimoto,1995;Astron.& Astrophys.投稿中;Arimoto,Tsujimoto,& Sofue 1995;Astrophys.j.投稿中)。
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