研究概要 |
時分割ラウエ法の発展に従い,酵素反応を立体化学の観点から理解できるようになってきた.RNaseAは最もよく調べられた酵素の一つであるがその反応機構の詳細についてはまだ十分には検討されていない.そこで,我々はRNaseAをもって時分割ラウエ法による酵素反応のケーススタディと考えた.このようなデータの集積は人工酵素の設計に有益な情報を与えるであろう. RNaseAの結晶を独自に開発したフローセルに固定し,基質であるCpA(3mM)を流し込んだ.その後,渡辺博士・坂部教授らが開発したラウエカメラを用いて白色エックス線を適当な時間間隔で20ミリ秒づつ照射した,それらのラウエ回折パターンをイメージングプレート上に記録し約2時間にわたりその構造変化を追跡した.データ処理は東博士の開発したプログラムシステムを用いた. ラウエパターンの変化を観測された反射の数とRmergeを指標にモニターした.反射数は基質導入後50分まで徐々に減り続け,その後,最初のレベルまで回復した.逆にRmergeは50分まで増え続け,その後最初のレベルまで減少した.このことは基質を導入したあと,何らかの構造変化が50分まで増大し続け,その後最初の状態にまで回復したことを指し示している.即ち,この構造変化はRNaseAの酵素反応に因ると推定している.現在,このX線強度データをより正確に評価しその電子密度の作成を試みている.
|