本研究ではインスリン様成長因子(IGF-I)をとりあげ、(1)そのホルモンペプチドの溶液中での構造と結合蛋白質との複合体中での構造を解析する。それらのために、(2)遺伝子操作によりIGF-Iの同位体ラベルを行い、多次元NMR法を用いた複合体中での構造を解析法の確立を行う事を目的として研究を行った。その結果 1)融合蛋白質法を用いたIGF-Iの大量産出系により15N標識したIGF-Iを合成した。この経験を生かし13C-グルコースを炭素源とした培地で13Cと15Nで二重標識したIGF-Iを得るために大腸菌の培養を開始した。 2)先に1H二次元NMR法によりIGF-1の溶液中の構造を決定していたが、上記の15N標識IGF-Iを得たので、異核多次元法による測定を行い分離のよい多次元スペクトルを得た。これを用いて帰属の確認および距離情報の追加収集を行い、構造を精密化することが出来た。複合体での構造変化を解析するのに有用であると考えられる。 3)共同研究を行っている米国Centrix社の研究所からIGF-Iの結合蛋白質の一つであるBP-IIIを入手した。現在我々が改良を加え、広い濃度域において分子量分布を解析することが可能となりつつある分析用超遠心機を用いてIGF-IとBP-IIIの解離会合系を解析し1:1複合体の形成を確認出来た。
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