研究概要 |
表面下のバルク格子欠陥の電子構造がSTMでどのように検知されるかを調べることを目的として、表面からLayer-by-layerで原子を取り除き、当該欠陥にたどりつくまでのSTM像、STSスペクトルの変化を追跡する。原子層エッチング法として、針状試料先端の表面ステップからの電界蒸発を使う方法を採用するにあたって、以下の技術的問題点の実験的検討を行った。 (1)針状試料先端へのSTM探針のアプローチ法:基板から一定の高さhだけ突出した微小突起群を持つ試料を用意し、この底面に普通の方法で探針をアプローチしたのち、h+dだけ探針を後退させ広範囲(2μ×2μ)に探針をスキャンしながら試料-探針間に流れる電界放出電流の面分布を測ると、探針電圧-300V,d〜1μ程度の比較的実現しやすい条件で探針位置が検出可能であることが分かった。 (2)電界印加法:針状試料の先端に充分な電界をかけるために対向電極にSTM探針を使うと、高電界による過大な電界放出電流によって起こる探針・試料の損傷が起こる。これを防ぐために、電界蒸発に必要とされる数10V/nmより約1桁ほど低い電界強度でも電界蒸発を起こさせる方法として、適当な波長の紫外光を試料にパルス的に照射して蒸発原子のイオン化を電子励起により誘起させる方法を考案し、Nd-YAGパルスレーザー(355nm,4mJ,4ns、交付研究費で購入)を設置した。 (3)試料作成法:Si基板を反応性イオンエッチング(RIE)装置を用い微細加工し、表面酸化法でティップ先端を先鋭化することにとより、所望のサイズのナイティップアレイを作製することに成功した。 (4)表面処理法:高温熱処理による欠陥のアニールとティップ鈍化を回避するため、HFによる水素終端化処理を行い、表面が超高真空下でSTM観察可能であることを確認した。 以上により今後の実験遂行の見通しを得ることができた。
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