本研究では、天然における火山噴火のメカニズムと考えられているマグマ水蒸気爆発の発生環境と詳細なメカニズムを明らかにすることを目的とした。工学的な金属融体と水との反応による蒸気爆発現象から、天然のマグマ水蒸気爆発もマグマの一次破砕(粗混合)と粉砕されたマグマと水の接触による爆発の2つの素過程からなると推定される。昨年度行った実験から直径1cm以上のマグマ球は水と接触しても爆発に至らないことが明らかになっており、上記の素過程がマグマ水蒸気爆発に必要である。具体的に実験室では以下のことを明らかにした。 (1)マグマの一次破砕に要する衝撃波の圧力の測定。前年度の実験研究によりまず1cm以下に一次的にマグマを破砕しなければならないことが明らかである。これまでにマグマの破壊強度を調べた例は動的にも静的にもほとんど皆無であったため、装置を開発して圧縮強度、引張強度を測定する必要があった。マグマを金属板に衝突させ圧縮強度を推定したところ10MPa程度であるという結果を得た。これは天然の蒸気爆発に必要な衝撃波強度の下限を与える。 (2)マグマと水との接触による爆発のメカニズムを知るため水中落下実験を行った。5mm程度以下のマグマは水中に落下させると容易に爆発する。高速度ビデオカメラを用いて水中でのマグマの挙動を観察した。水中に落下した後、マグマ球は0.5秒程度の間、表面が振動を繰り返し、(その振幅は2mm程度と大きく)やがて爆発する。これは爆発のメカニズムが熱応力によるものではなく、力学的な不安定(例えばテイラー不安定)によるものであることを強く示唆する。また、回収した爆発破砕片を調べ、粒径分布を明らかにした。マグマの場合は溶融金属の爆発に比べ、サイズは一桁以上大きこともわかった。しかし、どの物性がこの差をもたらしているのかはまだ不明であり、今後の課題である。
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