研究概要 |
雲仙普賢岳では溶岩ドームの出現に先行して,1991年2月から5月までマグマ水蒸気爆発がおこった.ドーム出現直前まで,火道を上昇する溶岩ヘッドの速度は約15m/日程度と考えられており,マグマ水蒸気爆発の間,溶岩ヘッドが火口の下で停溜していたとは考えられない.本研究ではマグマ水蒸気爆発について映像記録の解析を元に,マグマと水の接触について考察した. マグマ水蒸気爆発の映像記録を解析した結果,以下のことが判明した.マグマ水蒸気爆発は孤立型微動を記録してから100秒後におき,初めに白煙が発生し,その後コックステ-ルジェットを伴う噴火に移行した.コックステ-ルジェットを伴う噴火は数分間継続し,その後,連続的な噴火に移行した.コックステ-ルジェットの先端の移動距離と時間を画像から,初速が最大で50m/sをやや上回ることが分かる.この爆発圧は約3MPaと計算される.マグマ水蒸気爆発爆発の圧力が,爆発源の深さにおける静水圧に相当すると仮定すれば,爆発は火口底から約140mの深さでおきたことになる. マグマ水蒸気爆発をおこした時には溶岩ヘッドはまだ800〜600mの深さにあったと考えられる.これは水蒸気爆発中におこっていた孤立型微動の震源深度(750m以深)とほぼ一致する.この深さで帯水層中の水が溶岩ヘッド(約850℃)と接触し,水からガスへの急激な膨張がおこり,同時に,火道に詰まっている物質を上に押し上げたと考えられる.長さ約500mの通路を約100秒間かけて(7m/秒),マグマ破片を巻き込んだ水蒸気が詰まった火道物質中を粉体のように上り詰め,140m深で火道を埋めた物質の破壊強度を越えて破裂・爆発したことになる. このように普賢岳ではマグマ水蒸気爆発が爆発源ではなく,より深部でマグマが水と接触して発生したガスが,上昇し火口直下で破裂し火口底の土砂を吹き飛ばした可能性が高い.
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