研究概要 |
7年度は次のような研究成果を得た。まず,量子ドット構造の形成技術について,形成の初期過程の観察,自然配列化,新しい作製法の開拓,微小共振器量子ドットレーザ作製,劈開面上への量子細線の選択成長について成果を挙げるとともに,ナノメートルスケールの光・電子相互作用の解明として,近接場光顕微鏡による量子ドットの光学評価,マイクロフォトルミネッセンスによる2次元電子ガスとポイントコンタクト構造における電子の噴出現象の可視化を進めた。さらに,共振器ポラリトンにおける励起子-励起子散乱の効果の解明(9)微小共振器中の量子井戸における磁気励起子効果の観測,2次元フォトニック結晶における新欠陥構造の提案など,共振器効果についても重要な知見を得ることができた。さらに歪量子井戸を含むウエハに加工とパッシベーションを施すことで電子・光子相互作用を確かめるための発光特性観測および偏波依存性を確認した。 また,多重量子障壁に歪み補償構造を導入した多重量子障壁の電子波障壁の増大効果を明かにするとともに、それを化学ビーム成長法により製作し、良質な結晶と界面特性を実現するための製作条件を確立した。また、微小共振器による極低しきい値レーザを実現するために、AlAsの選択酸化構造を用いて光と電子を同時に閉じ込める微小光共振器構造を提案し、しきい値電流70μAの極低しきい値レーザを実現するとともにそのレーザ特性を明かにした。 さらに,理論的検討として,半導体発光素子の弱励起領域における光子統計を、量子ランジェバン方程式を用いて解析し、光子のファノ因子の新しい公式を導くとともに、物質が連続吸収スペクトルを持つ場合の共振器量子電気力学のミクロな定式化を行い、その簡単な応用例として、吸収性媒質よりなるcavityの中に置かれた原子による光子の自然放出確率を計算した。
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