研究概要 |
ゾル-ゲル法により-O-M-O-ネットワークを持つゲル細孔内にカプセル化されたアントロンからアントロールへの光誘起プロトン移動反応(励起状態ケト→エノール互変異性)等の機構とこれに伴う発光スペクトル、その強度変化、反応挙動に及ぼすゲル組成、特にSiとAl比、R=Si(Si+Al)の影響について検討した。 R=0〜0.5、酸及び塩基触媒と無触媒の条件下でゾル-ゲル反応の進行に伴う蛍光スペクトル変化を観測した。各系のスペクトル変化はRの違いに依存するが、スペクトル変化の原因は以下のように解釈できる。溶液調整直後ではエタノールがかなり存在するためにアントロールとの水素結合種が多い。反応が進行すると、エタノールよりも極性の小さいシラノール基が多くなりそのために反応はケと型に移動し発光強度が弱くなる。さらに反応が進行すると細孔表面との相互作用が強まり錯体種の形成が進む。 キセロゲル状態の試料に光照射すると、Rが小さい場合蛍光強度の増加とともに480nm付近から長波長発光の寄与が増した。この強度変化を各試料について1次反応としてプロットすると直線になり、各系の反応速度定数,k,を得た。これは、ゲル試料中のアントロンが光照射によってアントロールと変化することを示している。kはR=0.1の場合最大を示し、発光強度は光照射前後で約2桁違う系もあり、アントロンからアントロールへの互変異性が起こりやすいことを示す。Rが大きい場合やTiを含むと光照射前から錯体種の寄与が大きいためにフォトクロミズム的挙動は起こりにくい。従って、フォトクロミズムを生じるためには最適なRが存在することが明らかになった。
|