研究概要 |
有機分子を思いどうりに配列し高い秩序性を有する分子組織を構築することで、光合成にみられる効率の良い光エネルギー変換のような、従来の均一溶液系とは異なった新しい光化学の創出が期待される。そこで本研究では、LB膜や二分子膜などの二次元分子集合体の高度な分子組織性に注目し、光化学的に重要な機能を有する電荷移動錯体の形成制御とその光機能を検討する。電子供与体あるいは受容体、もしくは両者を有する両親媒性化合物を合成し、二次元分子集合体中における分子分布や分子配向特性と電荷移動相互作用の相関性を見いだすとともに、効率の良い光誘起電子移動やエネルギー移動を達成する。 1.電子受容部位としてビオロゲン、トリニトロフルオレノン、電子供与部位としてビフェニル、スチルベンを有する両親媒性化合物を合成した。 2.ビオロゲンとビフェニルをあわせ持つ化合物は水中で自己会合し二分子膜を形成する。二分子膜中における分子配向は、ビオロゲン親水部とビフェニル疎水部とを結ぶアルキルスペーサー鎖長に大きく依存し、短い場合には傾いた配向をとり隣接する分子間でCT錯体を形成した。犠牲還元剤存在下で可視光を照射しCT錯体を励起するとビオロゲンラジカルが生成する。ラジカルの吸収極大は560nm付近にありラジカル間での相互作用を示しており,二分子膜内でラジカルが蓄積され電子プールとしての可能性が期待される。 3.さらにスペーサー鎖長が長い場合には親水基部分に特異的な大きさの空間が形成される。適当なサイズの電子供与性ゲストを添加するとCT錯体が形成される。ドナー性が強いテトラメチルフェニレンジアミンをゲストとした場合にはゲスト分子のカチオンラジカルが形成され、形成速度はホスト二分子膜のスペーサー鎖長に大きく依存した。
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