研究概要 |
高秩序な分子組織体であるLangmuir-Blodgett膜中での光反応ダイナミックス、特に光誘起電子移動過程、エネルギー移動過程を明らかにすることを目的として、研究を行った。 LB膜中への光機能団(芳香族発色団)の導入 LB膜中に光機能性グループを導入する試みを検討した。長鎖アルキルアクリルアミド系化合物が優れた単分子膜、LB膜形成能力を有していることが見出された。このアルキルアクリルアミド化合物のLB膜形成能を利用し、LB膜形成能を有しない種々の光機能団をコモノマーとして導入することを検討した。コモノマー分子の大きさや両親媒性により導入率は変化するが光機能性発現には支障の無い程度の導入率が得られた。 N-ドデシルアクリルアミド(DDA)とコモノマーとしてLB膜形成能を有しない種々の芳香族ビニル化合物の共重合体を合成し、その単分子膜、LB膜の形成について検討した。例えば、最も基本となるスチレンの場合、種々の共重合物組成の単分子膜の表面圧(π)-面積(A)曲線の測定より、単分子膜はスチレンの導入により不安定となり、安定な凝縮膜はスチレンのモル分率が0.5以下の場合に得られることが結論された。しかし、安定な凝縮単分子膜中ではスチレンの占有面積は0.16nm^2/monomer unitの固有の一定値を有し、DDAの占有面積(0.28nm^2/monomer unit)との加成則により共重合体の占有面積は求められることが解った。同様な検討はナフタレン、アントラセン、カルバゾールなどについても行われた。 ルテニウム錯体を有する高分子LB膜 続いて、光レドックス活性種として、トリス(2,2-ビピリジン)ルテニウム(Ru(bpy)_3^<2+>)に代表されるビピリジンキレート型のルテニウム錯体を高分子LB膜に導入した。この高分子ルテニウム錯体の単分子膜の表面圧(π)-面積(A)曲線では錯体のモル分率の増加に伴い崩壊圧が減少し、立ち上がりの傾きが小さくなってはいるが、安定な凝縮膜の形成が示唆された。この単分子膜を、疎水処理を施した固体基板上に垂直浸漬法で累積したところ、上昇、下降とも累積比がほぼ1.0のY型の累積膜が得られた。ルテニウム錯体特有のMLCT(metal to ligand charge transfer)バンドに起因する吸収は466nmに観測されるがその吸収強度は累積層数に直線的に比例し、規則的累積が行われていることを示した。また、ルテニウム錯体の導入モル分率が0.12のLB膜の場合の一層あたりの吸光度は1.47x10^<-3>と求まった。 この単分子膜を用いた光エネルギーの電気エネルギーへの変換機能について検討を行った。透明電極であるITO上にルテニウム錯体の単分子膜を累積し、電解液中に電子供与体としてチオサリチル酸を存在させ、光照射を行った。光応答性の良い光アノード電流が観測された。(バイポテンションメータの購入)
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