解離フラグメント励起(PHOFEX)スペクトルの測定に基づいて、(1)分子または原子どうしが弱い分子間力で結び付いたファンデルワールス型クラスターにおける解離反応、(2)真空紫外光領域の多原子分子の直接光解離反応についての研究を行うことを計画し、これらのそれぞれについて以下の成果を得たのでここに報告する。 (1)HgRg_n(n≧1)クラスターのPHOFEXスペクトル 研究対象として、HgRg_n(n≧1)クラスターを取り扱う。そして、その第一歩として、HgArについて、そのB-X遷移について光解離フラグメント励起(PHOFEX)スペクトルを観測を行った。まず、B状態の連続準位への遷移がHg(^3P_1)原子を生成することを利用しHg(6^3P_1)をHg(8^3S_1-6^3P_1)遷移によって検出し、光解離フラグメント励起(PHOFEX)スペクトルを測定した。PHOFEXスペクトルの立ち上がりの部分の形状を解析することによって、解離限界を決定した。この解離限界から、状態のポテンシャルの解離エネルギーは、D_0=54.0(10)cm^<-1>、さらに、A状態についてはD_0=352.4(10)cm^<-1>、X状態についてはD_0=127.3(10)cm^<-1>であることが明らかとなった。 (2)OCSの真空紫外領域におけるPHOFEXスペクトル 波長可変真空紫外(VUV)レーザー光源を超音速ジェット中で極低温状態にあるOCSに照射し、OCS+hν->CO(X^1Σ)+S(^1S)の反応で生成するフラグメントであるS(^1S)原子を別のレーザー光でモニターし、PHOPHEXスペクトルを測定した。この150nm付近の^1Σ-^1Σバンドのうち、152nmおよび154nmのピークについて測定を行った。今回の測定の分解能が十分に高く、また、回転のホットバンドによる広がりがほとんど存在しないために、以前の測定に比べて幅が約100cm^<-1>も狭い。この測定によって、解離によるスペクトル線の広がりが33cm^<-1>であり、解離寿命が160(5)fsであることが初めて明らかとなった。
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