研究概要 |
1.ポリパラフェニレン(PPP)可視光触媒系 PPPは可視光照射下において、ベンゾフェノンのα位の炭素にCO_2の挿入反応を行う光触媒として機能する。この申請者らが見出した新規なCO_2固定系では、ベンゾフェノンの連続的2電子還元によって生成したカルバニオンにCO_2が挿入していると考えられる。さらにテトラエチルアンモニウム塩の添加により、挿入反応の促進が観測され、PPP表面におけるカルバニオンの安定性が反応活性に大きな影響を及ぼすと考えられる。この系について、反応条件の変化と生成物の変化を検討し、上記のカルバニオンへのCO_2挿入、アルデヒドの付加、プロトン付加が競争的に進行していることが明らかとなった。また、第4アンモニウム塩、ホスホニウム塩、など分子中に正電荷の大きな非局在性を有する化合物がCO_2固定変換効率の促進に有効であり、これはカルバニオンの安定化によると推察した。 2.ポリ(4-トリフルオロメチルピリジン-2,6-ジイル)(CF_3-2,6-PPy)可視光光触媒系 CF_3-2,6-PPyは可視光照射下においてカルボニル化合物の還元反応対する光触媒作用を発現し、この還元反応が連続2電子還元であることが、生成物分布の精査およびトレーサーを用いた実験から明らかとなった。この化合物は強力な発光を示し、トリエチルアミンでの消光が観測されることから、PPPと同様にラジカルアニオン経由の還元機構が推定された。このポリマーは有機溶媒に不溶のため通常の分光法による検討が不可能である。そこで3量体および4量体を合成した。オリゴマーにおいてもCF_3基導入による吸収の長波長シフトが見られ、ポリマーの基礎物性が反映されていることが示唆された。今後、オリゴマーの光化学過程を詳細に検討し、ポリマーの連続2電子還元反応に対する光触媒作用の機構を明らかにする。
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