研究概要 |
アニリン(ANI)、ジメチルアニリン(DMA)、ジエチルアニリン(DEA)はベンゼン溶媒中では励起三重項状態に対応する誘電吸収信号が得られるが、CCl_4溶媒中ではいずれも極性の非常に大きな中間体の生成が観測され、接触イオン対生成であるとみなされた。ベンゼン溶媒中にアニリン誘導体とCCl_4を含む系でも接触イオン対生成が観測されたが、その生成機構はANIとその他では若干異なる。すなわち、いずれの場合もCCl_4と基底状態で弱い錯合体を形成しているものが励起された場合にイオン対生成に導くが、DMAとDEAではさらにもう一分子が結合してより安定なイオン対生成に導く反応の存在が示された。CCl_4以外のハロゲン化合物の存在下では、イオン対生成の効率が、CCl_4>>C_6H_5I,>>C_2H_5I>>C_6H_5Br>C_2H_5Brとなり、気相電子付着反応との相関性が確認された。一方、TMPDと構造が類似するがイオン化エネルギーがやや高いとされているジメチル-、ジエチル-、トリメチル-パラフェニレンジアミン類について、CCl_4溶媒中で接触イオン対生成を確認した。いずれも生成機構は上記アニリンの場合と類似することが分かった。またどの場合も生成するイオン対の双極子モーメントは約10D以上であることが示された。 TMPDとTMBに対して光吸収によるレーザーフラッシュホトリシス法を用いた実験を行い、マイクロ波誘電吸収測定で提唱された接触イオン対生成過程の存在を確かめてみた。その結果、ベンゼン溶媒、CCl_4溶媒中で観測される励起三重項状態の生成・消滅とカチオンの生成に対する吸収スペクトルと過渡吸収信号は、提唱されたイオン対生成機構を支持することが示された。
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