複合糖質に普遍的に存在し、その認識単位としての重要性が知られている各種オリゴ糖鎖(2-4糖)を酵素合成により達成し、これらオリゴ糖鎖を認識シグナルとして活用そして機能化することで生体分子との特異性解析を行う。 1)申請者が開発した合成法に基づいて、各種起源のβ-ガラクトシダーゼ、リゾチーム、N-アセチルヘキソサミダーゼ等の人為的制御下で発現する糖転移反応を駆使し、一連のガラクトシル2糖(Galβ1-4 GlcNAc、Galβ1-3GlcNAc、Galβ1-3GalNAc、Galβ1-6GalNAc)、N-アセチルグルコサミニル2-3糖(GlcNAcβ1-4GlcNAc、GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)の合成法を確立した。 2)合成したp-ニトロフェニル-ガラクトシルオリゴ2糖のニトロ基を接触還元によりアミノ基を導入し、アクリル酸とのアミド化を行って、p-アクロイルアミノフェニル配糖体とし、これをモノマーとして用いて、単独ラジカル重合を行って重要オリゴ2糖を組み込んだ各種糖鎖高分子を合成した。 3)N-アセチルラクトサミンやラクトースを含む合成糖鎖高分子を用い、各種レクチンとの相互作用を寒天ゲル内二重拡散法そして赤血球凝集阻害反応より糖鎖結合特異性を解析し、これら糖鎖ポリマーが糖鎖特異性決定の精度の高い糖鎖プローグ材料として有用であることを示すことが出来た。 4)BIAcoreシステム(リアルタイム生物学特異相互作用分析装置)を用い、上記合成したオリゴ糖単位を装置内部のセンサーチップ表面に固定化し、このリガンドに対しレクチンを注入することで分子間のアフィニテイー解析を行ったところ、オリゴ糖鎖を分子認識の特異性解析に利用できる可能性を示した。
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